動物病院にて
我が家の猫がマーキング行動や求愛の夜泣きをするようになったので、
去勢手術を受けさせることにした。
少し可哀想な気もするが、
人間と共生するためには仕方がないことなのかもしれない。
嫌がるのを無理矢理ケージに押し込み動物病院にでかけた。
待合室は治療を受ける猫と飼い主でいっぱいである。
「猫好き」という共通項があるので、飼い主たちはすぐに打ち解けて、
小さな輪がいくつも出来ている。
30分ぐらいして少し待ち飽きた頃に、
重そうに猫のケージを抱えた、上品な老婦人がやってきた。
ケージの中にはアメリカンショートヘアーの子猫が入っている。
猫は怯えているのか、暴れ回り悲痛な鳴き声を出している。
空いたベンチに腰掛けた老婦人は、猫をなだめようと話しかけている。
「ねえクロちゃん、男はそんなに泣いたらだめよ。男は我慢するときは我慢しなくては・・」「ママだって子供を二人も産んだけど痛かったんだから・・」
「昔の男はみんな戦争に行って辛い目に遭ってきたんだから・・」
いつもこんな風に子猫に話しかけているのだろうか、
老婦人の話は止めどもなく続いている。
去勢のための予備検診とワクチン注射が終わって待合室に戻ってきた。
その時老婦人と「クロちゃん」の名前が呼ばれた。
待合室の前で老婦人が、猫の病状を訴えている。
「クロちゃんが昨日の夜に、金玉が痛いと日本語で言ったんです・・」
「クロちゃんはいつ日本語を覚えたのかしら・・」
猫が本当に日本語を話したにしろ・・老婦人の妄想にしろ・・
ざらざらの猫の舌で、顔を舐められたような気分になった。
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